村上春樹氏の大ヒット作『ノルウェイの森』の映画化です。
監督は『青いパパイヤの香り』のトラン・アン・ユン監督。好きな監督ですが・・・正直、外国人の監督が映画化することに少し不安を感じていました。
映画を観た感想は・・・その不安が的中したのが半分、思ったより良かったのが半分かな?と思っています。
残念だった点ですが、思い入れのあるような場面では、どうしても「そこは、そうじゃない」と感じてしまいました。例えば療養所でのワタナベと直子の戯れ、思いのほかさっぱりと描かれていたことが残念です。あそこは、もっと悲しく美しくて、胸が苦しくて涙がこみ上げるような演出が欲しかった・・・遠い遠いノルウェイの森、この世界に2人っきり、というみたいに。
けれど、この作品の「胸苦しさ」を立体的にせず、平面的でさらりとしたものにしているのはきっと意図的だと思われるのです。もちろん監督の好きにしてもらって当然だけど・・・。
そして良かった点、それは何と言ってもワタナベの演出!セリフは村上春樹節に忠実ながら、軽く無視して映像としてのワタナベを監督の意思で作り上げているところ、上手い!直子も、小説ではただ「泣いた」とだけ書いてあるところを、感情的に演出しているのは素晴らしかったです。しかも美しい長回しの「泣き」で。
とにかく何と言ってもこの映画化は、ファンにとってうれしいニュースです。