2011年7月18日月曜日

『幽霊たち』

お芝居を観に行くので、ポールオースター『幽霊たち』を何年かぶりに読み返しました。

感想/始めと最後がナレーション風、いかにも寓話を匂わせる。ブルーはともかくブラック(ホワイト)の人物像が分かりにくいのは今回も同じ、登場する女性達の描き方がそっけない、これも同じです。

そして今日、千秋楽の舞台を観に行ってきました!

幾つかの意外な演出がありました(物語の始めと最後が、ブルーによって語られたことなど)ブルーが遭遇する数々のエピソードを「他者」が語るところ、そしてブルーの妻が小説以上に感情を言葉で表すところもです。

美術や衣装が想像以上に素晴らしかったです。音楽もトランペット中心のモダンジャズで、ぴったりハマっていました。セリフもアクションも多く、役者さん達は大変だったと思います。セリフだらけのブルー役の佐々木蔵之介さん、何役も演じた市川実日子さん、共に大変お美しく素晴らしかったです。

お芝居を観て「この物語はNew Yorkが舞台だということが大きい」のだと気が付きました。小説だけでは描ききれない「何か」が浮かび上がります。New Yorkの街を行き交う人々の姿(実際に舞台で何度も交差する)は、都会の雑踏に浮かびあがる空虚を埋めていくかのよう。それはクロスワードパズルに文字を埋めていく作業の様にも見えました。

完成してもただそれだけの満足感、都会に生きる虚しさ・・・。

小説では謎の部分が、お芝居を見てスッキリしました。ナレーションをブルー本人がすることによって、自分自身を取り戻したブルーの過去の話なのだと分かります。それが大きな収穫でした。

ただ、ブラック(ホワイト)は謎のままです。立体化したこの作品を通しても私には「とにかく変わった人物」にしか見えない(汗)演じる奥田瑛二氏のこの役に対する戸惑いまで、手に取るようでした。

小説の舞台化、これからも注目したいと思います。