2015年2月21日土曜日

『ジョゼと虎と魚たち』

少し前になりますが読書会でした。


今回のテーマは田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』、読書会では初の短編集です。

本のタイトル「ジョゼと虎と魚たち」をメインに、この魅力的な短編集について感想を語り合いました。

司会のEさんが丁寧にストーリーを解説してくださったので、セリフの一つ一つにまで言及できて楽しかったです。「うるさい、死ね!阿保!」を始めとする、こてこての大阪弁(笑)のセリフには爆笑、漫才の台本のようです。

そんな愉快なセリフとは裏腹に、どこか悲しく刹那的な物語には涙せずにはいられませんでした。恒夫と結ばれたジョゼが動物園に虎を見に行くシーン・・・檻の中の虎に雄たけびを浴びせられ、

「夢に見そうに怖い・・・」

「そんなに怖いんやったら、何で見たいねん」 

「一ばん怖いものを見たかったんや。好きな男の人が出来たときに。怖うてもすがれるから。
(中略)
もし出来へんかったら一生、ほんものの虎は見られへん、それでもしょうない、思うてたんや」

障害者として生まれ辛い人生を送ってきたジョゼにとって、この「好きな人と虎を見に行く」儀式は「婚礼」にも相当するほど大切なものだったのかもしれません。

若く不自由で未来を感じさせない2人、出会いから新婚旅行(正式には結婚していない)までの時間は切なく甘酸っぱいものでした。明るい未来を信じたいけれど、 わたしがまだ観ていない映画版では「出会いから別れまでが描かれていたのよ」と教えてもらいました・・・そうか、そうなんだ。

小説でのラスト、

(アタイたちはお魚や「死んだモン」になったー)と思うとき、ジョゼは(我々は幸福だ)といってるつもりだった。

明るい未来を予感させていると、私は信じたいなぁ。

その他の短編にも共通するのが、場面はセリフで切り替わっていること。ドラマチックでリアルな世界観は、田辺聖子の持ち味。そして何といっても文章が上手い!

良質な生地で仕立てた、律義なワンピースのような短編集でした。