2014年5月22日木曜日

『黄色い本』

また読書会をしました。
今回のテーマは高野文子さんの『黄色い本』、読書会初の漫画です。

作品の時代設定、昭和の雰囲気を感じたくて、開催場所は純喫茶を選んでみました。年季の入ったテーブルがイイ感です。


昔から高野さんのファンです!


ただ、この『黄色い本』は少し難解と言うか、主人公(実ッコちゃん)の愛読書『チボー家の人々』を読んでいないのもあって(←全五巻は手が出にくい)一度読んで放置してしまっていました。もう一度本を手に取る機会が出来たので、じっくり読んでみたところ、幾つかのことに気が付きました。

まずはカット割りや構図が「映像」なんだということ、アップや引きの表現が上手いのです。時間の流れも独特で、実ッコちゃんの妄想の場面では時間が止まっていたり、かと思うと次のカットでは急に時間が進んでいます。高野さんは「寡作の漫画家」と言われるだけあり、この作品にも三年の歳月が費やされたようですが、一コマ一コマがとても丁寧に描かれているのが分かりました。

また、弾圧・革命・闘争・思想などのフレーズが散りばめられた『チボー家の人々』の世界と、高校卒業を目前にメリヤス工場への就職を決めた実ッコちゃんの現実世界(昭和40年代の高度成長期)とのコントラストも上手く表現されています。最終章では、本の世界に別れを告げ、図書館に本を返却に行く実ッコちゃんの後姿のみが丁寧に描かれ、映画の印象的なラストを連想させるのです。

実ッコちゃんは誰にも知られず本の世界に自分を置きました。そこで意見を言い、登場人物と会話をして、お別れでは涙を流しました。読み終わる頃には、その本の世界は実ッコちゃんの故郷になったのです。いつでも戻って来れるような・・・

「きちんと小説と向かい合うって、こういうこと?」「もっと読書をしたいなー」と感じさせられる作品でした。

今回チャレンジだった漫画の読書会、高野さんの素晴らしい作品のおかげで、かなり手応えを感じることができました。けっこう盛り上がったなぁ。