今回は西加奈子『通天閣』です。
西加奈子さんは『きいろいゾウ』を始め他何冊か、読んだことがあります。どの作品にも共通しているのが、登場人物がかなり個性的なこと。彼らの、非生産的で単調な日常を退廃的な結末を予感させつつ静かに描いて行きます。そして乱暴なセリフや汚れた描写の中に、独特の「不幸で美しい世界」を作り出すのが上手いです。
ということで『通天閣』の感想です。
やや辛口になってしまいますが、、
一番の感想として物語の構成が気になりました。単調な前半からいきなり後半で大きな動き、夢と現実が交錯して気の散る物語の構成に（特に、最後に通天閣をメインに持ってきたのは強引に感じる・・・）肩を落としながら読み終えることとなってしまいました。主要人物の男女も、前向きな未来を予感させるラストなのに、どこかスッキリとしなかったです。また登場人物のキャラクター紹介だけが詳しくて、その背景にあるものが最後まで見えてきませんでした。異色の脇役「ダマー」や、貞子似のママ、といった強烈なキャラクターを登場させながら、気を持たせたまま何も起こらない消化不良の結末も残念です。
西加奈子さんは美しい言葉を生みだす作家、「照れ」のようなものを捨てて、美しい言葉を操ることに専念した作品が読んでみたいです。今後の作品に期待したいと思います。
そして読書会の感想です。
読書会の進行を、毎回リーダーさんは趣向を凝らしてくれてます。今回は朗読付きで、新しい試みが良かったと思います。ストーリーの解説が丁寧だったので、とても分かりやすかったのですが、もう少し時間の余裕があれば「夢」と「現実」の関連性も追求してみたかったです。
通天閣には、まだ行ったことがないので一度は訪れてみたいです。
